翠玉のメロディ

岩手へ

塞ぎ込んだ僕を見かね、環境を変えてやろうと親父は移住を提案したのだと思った。嬉しかった。しかし元来親父は人のために何かをする人ではない。今思えば自分が故郷に帰りたくなったから僕を出しに使ったのだ。ひとりでは帰りづらいが、僕も行くとなれば母も来る可能性が高くなる。

盛岡に親父とふたりで移住し、親父の恐らく思惑通り母も遅れてやってきた。妹は東京に残った。僕はしばらくうだうだしたあと、母の故郷近くに職を見つけ、一人暮らしをしながらそこで働くことになった。

自然に囲まれ何もかもが新しい経験だったが、何年かしてうつがぶり返し、職を辞めた。盛岡に帰る気力もなく、その場に残ったまま酒ばっかり喰らう毎日を送っていたら、ある日たまきん辺りが猛烈に痛くなった。

-

trackbacks (0)

Trackbacks

LOOP START

LOOP END

Calendar
Categories
New Entries
Recent Trackbacks
Archives
Profile
Other